七夕は陰湿で陰険で陰惨な物語

本日は二十四節気の「小暑」そして「七夕」ですね。

七夕は「しちせき」とも呼ばれ七月七日の夜に行われる年中行事の星祭を指します。日本に伝来し奈良時代に貴族層に受容され”万葉集”にも詠まれます。

少納言は『枕草子』で「七月七日は曇り暮らして 夕方は晴れたる空に 月いと明るく星の数も見えたる」と書き記しています。

 

彦星=犬飼星=男星 鷲座の首星 アルタイル

織女=織姫星=嫁星 琴座の首星 ベガ

 

如是我讀・・・・

 

七夕の語源は織姫星の異名の翻訳説と機を織る女の棚機津女(たなばたつめ)が水辺の機屋に篭って神の服を織り、神を迎え祭る在来の信仰によるとする説が有ります。

此の時期は盂蘭盆や農耕儀礼で有る「眠り流し」と重なった為、各地の農村にも廣く定着しました。

盆と暮れの二期を「魂迎え」の時期と信じ、此の時期に海又は山の彼方から来臨する常世の神乃至は祖霊を迎えるべく、村外れの海や川、湖沼の入り込んだような水辺に「棚」と呼ばれる祭壇を設け、其処で神の衣を機織る「神の嫁」として乙女が「棚機津女」と呼ばれました。この「棚機津女」の信仰に基づくもので有りました。因みに神の妻となる処女を住まわせた川辺の清浄の場所を”湯河板挙”と謂います。

万葉集に「天の川 棚橋渡せ織女(たなばた)の い渡らさむに棚橋渡せ」と詠まれいます。

「七夕」の讀みは「棚機津女」から来ています。

 

※眠り流し:秋の収穫前に仕事の妨げとなる睡魔などを送り出す為に形代に「穢れ」などを付けて流す所謂「神送り」の行事が発達したものです。主として七夕送りの行事として全国に分布していますが、津軽地方の「ねぶた祭り」秋田の「竿灯」が特に規模盛大で有名ですね

又、「七夕人形」や或いは笹竹を立てて提灯を吊るして注連縄を張ったり、飾り物を乗せた「七夕舟」を川や海に流しました。日本本来の七夕祭りは夏と秋との季節の行き合う時期に行われる季節の祭りで有り、先行して行われる六月晦日の「夏越しの祓え」の神事と習合し半年の罪穢れや疫病神で有る牛頭天王を流し退散させる為の「行き合い祭り」としての性格が強いです。

→季節の交差期に禊ぎをして身についた罪穢れを洗い流して新しい生活に入ろうとする信仰に基づいています。三月の雛の節句に形代としての人形を作り、此れに穢れを撫で付けて川や海などに流す「流し雛」五月の節句の武者人形も同様ですね。七夕も同じで盂蘭盆という大きな祖霊祭を控えての重要な禊ぎ祓えの行事でも有りました。特に上弦の月の出る七日の夕べは望月十五夜の祖霊祭の行われる潔斎の最初の日でも有りました。

 

□七夕は陰湿で陰険で陰惨な物語

「棚機」は不吉の象徴 ”棚機”の格数は28格=大凶の数。人間関係で人の何倍も苦労しやすい運を持つ。人から裏切られる。結婚しても相手が急に変貌し苦労する。

  ・機(はた)は正に婢に問うべし=は卑しい身分の女性の役目という意味

   棚機津女は神に衣を着せて差し上げる「更衣」

   平安時代には「更衣」という身分の女性がいました。「更衣」の仕事は天皇の衣

   替え。同時に後宮の女宮として天皇の寝所で奉仕する役目を担っていた。中宮

   女御に次ぐ地位を与えられていました。

 ※棚機津女とは神の一夜妻(強制的に神の相手をさせられた女性)。

 棚を打つ=捕縛する・逮捕引到する意。又、「機」は遺体を安置する床という意。

 「棚機」=捕縛され磔に遭っている死に体の状態を表しています。

 →棚機津女=(棚機の女)は自由を完全に奪われている女性。

 

蜘蛛姫(細蟹姫)の伝承

  七夕の夜の供物に蜘蛛の糸を懸けたら願い事が叶い、待ち人が来る。蜘蛛と小さな

  蟹とは姿形が似ているから讀み方が同じという説が有ります。

  蜘蛛=「朱を知る虫」=水銀

  細蟹=ササ・カネ=砂々・金 

  蜘蛛も細蟹も砂鉄や金を司る人々を表している=産鉄民

  砂々は七夕の「笹」に繋がります。不吉な言い伝えを多く持っている「笹」を敢え

  て飾る。

  笹を七夕飾りに特化して飾られているのは、其れが「砂々」を象徴していたから。

 ※笹を持って出現する人間は此の世にあっては狂人で有り、若しくは異形の者と考え

  られてきました。湯立神事で笹の雫をかける巫女なども一時だけは神懸かりして此

  の世の存在では無くなるという設定が有りました。

 

 七夕の歌に隠された秘密とは・・・・明日に続きます。